■プロフェッショナル

尾崎英二郎  ヨハネ研究の森でヘレン・ケラーを扱った今年、各時代の子供の変化を切り口にして研究が進んできた。 今回はその中で扱った映画「硫黄島からの手紙」に出演していた尾崎英二郎さんに講演をしていただいた。
 今回、私は主に俳優・尾崎英二郎として彼に学ぶものがないかと思っていた。というのも、私が今まで 仕事をしている人に出会ったとき、その仕事の面白みが解るとまた一つ、視野が広まっていったからだ。 ヨハネでは、自分がある意味、主任研究員と同じように時には研究員を指導し、成長を望み、時には自分 に集中していった。そこから、先生という職業が私の中で大きく変わり、人を育てるプロとして本当に難 しく奥が深い仕事だと思った。また、井上ひさしさんに出会ったことで作家としての面白みも知った。ひ さしさんは、自分自身が思う作家としての醍醐味は日本語の素晴らしさを発見できることだとおっしゃっ ていた。APU(立命館アジア太平洋大学)では、観光についての模擬講座を聞き、観光というのは、お 客さんがどのようなものを求めているかを常に調べ、推測し、その上でその土地で出来る工夫をしていく、 地域の人々とお客さんの汽水域を見つける仕事だとイメージが変わった。これが何の役に立つかは分から ない。けれども、そういった新しい視点というのは、常に私自身に刺激を与えてくれている。だからこそ、 今回も俳優の醍醐味を知ることによって自分の世界が少しでも広がればいいと思っていた。そういう意味で 私は尾崎さんの講演に大きな期待をしていたのだ。
 だが、尾崎さんに「俳優という職業の魅力は何ですか」と聞くと、「分からない」と答えた。自分はま だ試行錯誤の最中で、俳優が自分にあっている職業かも分からない。だから、俳優の魅力といっても語 れないとおっしゃったのだ。私はこのことで、尾崎さんはまだプロフェッショナルではないのかもしれな いと感じている。これは決して非難ではない。ただ、その仕事をやり続けていれば、何か自分を常に離さ ない魅力に出会うのではないか、と思う。
尾崎英二郎  私自身、ヨハネに入る前からリーダーに対しての憧れが強かった。小学校では学級委員長でそれこそ、 リーダーになりたいと漠然と、ただ熱く思っていた。だが、ヨハネに入ってからはリーダーの責任も知っ た。リーダーになるには人間として人の前に出ても恥ずかしくないような人間性がなければいけない、そ して、みんなに信頼されるような人間でなければいけないのも分かってきた。そして、少ない経験ではあ ったけれども、自分がリーダーをやってみて、自分の伝えたいことがみんなに伝わったとき、そして、そ れによって全員が一丸となって動いたときというのは、本当に心から嬉しくなるときがある。私にとって は、これがリーダーの魅力である。この、時々にしかない達成感や充実感、そういったものがリーダーを する私にとって最大の栄養剤となっていた。だから、仕事をしている人も、何か成し遂げる人にはそうい った成功体験があると推測している。それがなければ、プロにもなれないと自分で思っている。だからこ そ、尾崎さんが「分からない」と答えたとき、私はこの人はプロではないと生意気に推測したのだ。
 ただ、尾崎さんの方が今の私よりもよっぽど、自分の信念にまっすぐに動いていると感じた。尾崎さん が講演中に何度もいった「やってみろ。」そして、周りに「みてろよ」と思えばいいという言葉。今の私 にはまだ言えないと思った。ヨハネ研究の森にいる中で、私は不満を持ち、不平を持つ中で、でも、自分 のいるところなのだから、プラスになるような吐き出し方をしようと思っていた。そして、理想郷はどこ にもなく、自分でつくるしかないとも思っていた。けれども、そこまで思えていながら、結局、具体的な 提案は何もしてこられなかったと悔やんでいる。もうすでに卒業した今、その後悔をヨハネで挽回するこ とは出来ない。誰がどう思っても、私の中に悔いがある。そして、思っていても行動しなかったからこそ、 余計に悔しい。これまで、たくさんの企業の社長や会長の言葉に改めて耳を傾けてみると、みな口を揃え ていう。
「やってみろ、そして失敗したらまた調整すればいい。」
私は改めて尾崎さんの言葉を思い出している。やってみる、みんなの前で恥をかく。これが私にはまだ足 りない。そういった緊張感を高めてくれたのは、尾崎さんの講演であったと思う。そして、プロについて の私の考えを改めて言葉にできたのも、このことがきっかけになっていると思う。今回の講演は私にとっ て、時代考証というよりも、人間として更に成長するための後押しをしてもらったものとなった。この悔 しさを大学にもっていき、そこで昇華させたい。それが私の強い望みである。 (高3 T.S.)