なぜヨハネ生は「メモ」をとるのか?
2010年5月14日(金)
ヨハネ研究の森では、セッションやゼミで人の話を聞いたり、映像を観るときは必ず「メモを取りなさい」と言われます。メモを取ることはなぜ重要なのでしょう - 5月14日のセッションより


ふり返りをすることが大切

大下T ヨハネでは、メモを取って振り返りをするのが大切だと何度も何度も言っていますよね。それぞれのゼミで、どんなことをやったのかということを言われなくてもふり返ってまとめておく。短くてもいいから。文章にする。なぜそんなことをするのでしょう。
メモをとるというのは、もちろん昔のことを思い出せるというのもありますが、それ以外にもメモをとることの効用というのがあります。みなさんはそれについてどのように考えていますか?

たとえば、ふり返りをする材料になる。その場にいなかった人にもどういうことが行われたのか分かるように説明をするときに役に立つ。ふり返ってまとめるという訓練をしておくと、人前でプレゼンテーションしたりすることもできるようになる。入学式のときの下田君とか大場さんのスピーチのように。ああいうことは、メモをして、まとめるということを繰り返す中で、自然とそういう力が磨かれていってるんですね。

それから、メモの取り方もいろいろあるでしょう。一般の学校では、中学校はだいたい黒板に書いてあることを写しておくと学校のテストはできるんだよね。だけど高校、大学になると先生が板書をしてくれなくなる。だから、ヨハネ生みたいに普段からメモを取る習慣があればいいけど、そうでない場合は話を聞いて自分でメモを取ることができなくなってしまう。

メモについて、主任研究員やベテランのヨハネ生はどんな風に考えていますか? メモと言えば、マインドマップやポメラの先駆者である松並先生、いかがですか。

松並メモの成長過程

松並T ヨハネ研究の森に来てから、僕のメモのとりかたはどんどん進化していきました。その中でいろいろ発見や気づきがありましたが、これまで出来なかったことができるようになった、ということに的を絞ってお話したいと思います。

僕は、「ヨハネ通信」(保護者向けの定期通信)の制作を担っているのですが、毎回発行日である帰省日の前日は原稿を書くのに徹夜していたんです。これは、ちょっとなんとかしたいと思っていたところにポメラという商品が発売されて、これは、電池で二〇時間動く小型のワープロみたいなものなんですが、これで最初からセッションのメモを取れば楽じゃないか!と思ったんですね。それで、今はポメラで話されたことを話されたままメモするということができるようになりました。ヨハネでよく言う「全取り」ということが可能になったのです。





物語る力が身につく

松並T メモを取って、ヨハネ通信にまとめるということをやってきて、つまり、話を聞いてメモをして、ふり返りをして、要約するということを通して、何ができるようになったのか。いくつかお話しましょう。一番は、こうして自分の体験を物語れるようになったことだと思います。

僕は、ヨハネ研究の森に関わり始めた当初、横瀬先生がセッションで話をしたりするのを見ていて、中学生や高校生、小学生までもが、みんな長時間話を聞いていることができる。また、多くのヨハネ生が、話を聞きながら鉛筆を走らせているのを見て、「これは凄いな」、「とんでもないところに来てしまった」と思ったものです。
また、話を聞いて自分なりの考えや解釈が湧いてきたものを堂々と述べている。一体どうしたらあんな風に話ができるのだろう、どうしたらあんな風に参加できるんだろうと思って、ずっと研究していたんです。
今、こうして話をしていますが、こんな風にまとまった話をすることは当時とてもできませんでした。

人は誰でもはじめから自分の思ったことを言葉に表すことなんて出来っこありません。自分がそうだったように、多くのヨハネ生がかつてそうだったように、訓練によってしか可能にはならないことがあるんだということに気付きました。

今、このようにして自分を物語っているわけですが、物語るということは非常に重要で、例えば、高校三年生は大学を受験するときに、特にAO入試では自分を語れるかどうかが問われるわけです。自分のやりたいことに他の人を巻き込むことができるかどうか。共感してもらえるかどうか。ヨハネ研究の森の生徒の多くがAO入試に強いのは、そういう自分を物語る力があるという部分が大きいのではないかと思います。


自分の中に回路を作る

鈴木T 五年前に松並先生がヨハネ研究の森に来たとき、壇上に立ってこうして話すということは三分間スピーチすらできなかった。今、話を聞いているととても説得力がある。そういうことを本当に実践してきたからだと思います。

去年の夏休みに松並先生と一緒にマインドマップの講習会に行ったんです。帰ってきて、講習会で言われたとおりに二人ともカラーのサインペンを手に入れた。私はやらなかったけれど、松並先生はそれを実践をした。

メモを取ることを実践する。横瀬先生が「言葉の獲得」について話をしてくれたとき、「回路を作る」ということが話題になりました。学ぶということは「Learn」」で、言語を獲得するということは「Acquire」。これは頭ではなく自分の体の中に新しい回路を作るということ。メモを取るということも、同じなのではないでしょうか。自分で実践し、その回路を作り上げていくことが非常に重要だと思います。

社会に出てお金を稼いでいくためには、世の中に貢献でき、他人から必要とされる人間にならなければならない。卒業生の早川くん(現在京都大学大学院在学)は、ヨハネ生時代に、とにかく漢詩についてはとことん研究していた。その結果二松学舎大学の学長さんから直接「うちの大学に来て欲しい」とお誘いをいただいた。

人から求められる人材になること。そのために自分を鍛え上げていくこと。それは、回路を作り上げていくということ、メモを取り、ふり返りをするということにも通じていると思います。

ですから、みなさん、ヨハネ生としての回路を作り上げるためにも、これからもメモを取るという実践をし続けてくださいね。