原子力とは何か 〜原子力は誰が発見したのか〜
2011年5月27日(金)

原子力発電所で利用されている核分裂反応。このときに発生する熱は物質を燃やしたのとは桁違いです。一体、いつ、誰が、どのように、このようなものを発見したのでしょうか。

核分裂で熱が発生する

横瀬  こんにちは。原子力発電所についてみんな本を読んでだいたい知っていると思うけれど、火力発電の仕組みと同じなんだよね。水を沸騰させて蒸気の力でタービンを回して発電をする。 そのとき、原子が核分裂をする力を使って水を沸騰させている。このときめちゃくちゃな熱が発生するんでしょう? とてつもない高温だから、あっという間に水が沸騰する。 原子炉の中ではそういうとんでもないエネルギーが放出されているらしいんだけど、いったい何度くらいの熱になるのだろうか? さっき、簡君が炭素と比べると百万倍の熱が出るって言っていたけどどうしてそんなことが起こるの?

保科 雑誌『Newton』をみんな見ているから、ウランという物質が、壊れるときに大きなエネルギーが出ると言うのは、知識としては知っていますよね。

横瀬  物質が壊れるって、トンカチでウランを叩くの?(笑)

保科  ウランの原子を壊しているんです。 『Newton』に書いてあった範囲だと、ウラン原子に中性子を当てると、その時に莫大なエネルギーを出して崩壊すると。 実際にどういう風にして崩壊するのか、なぜ崩壊するのかは分からないですけど。

横瀬  原子が壊れるときにはそんなすごい熱が出るんですか?

簡  炭素と比較すると分かりやすいですが、炭素12グラムがCO2になると、水が1リットル沸騰する。これがウランだと12グラムで競泳用プール1つが蒸発するくらいのエネルギーが出るらしいです。

保科  原子の核が壊れるとそういうことが起こるんだ。 今の横瀬先生の質問は、原子が壊れちゃうくらいでなんでそんなエネルギーが出るのかということですね?

横瀬  それが不思議なんですよね。 「核分裂」と言うけれど、どうして考えられないような熱が発生するのか。 いつ、誰が、どんな仕方で発見したのか。誰かがどこかの段階でそれを発見したから今それを利用できているんでしょう。


「核分裂」は化学反応とは異なる

簡  「核分裂」を発見したのは、ハーンとシュトラウスマンという人らしいです。

保科  『Newton』に載っているんですが、原子核に陽子とか中性子というものが集まっている。そして、その原子核に中性子がぶつかって、核分裂が起きると、核分裂生成物ができる。原子核が壊れた破片ですね。その破片の質量の合計は、元のウラン235の原子核の質量より1/1000減少する。それが、熱エネルギーに変換される。

質量がエネルギーに変換できることを発見したのがアインシュタインで、世界で最も美しい数式とも評される「E=mc2」だと書いてありますが、このあたりに秘密がありそうですよね。

横瀬  本を見るとそれらしい説明が書いてありますよね。だけど、それはもう「へぇ〜」と思うしかないじゃない。「本当かね?」と思いますよね。多分本当なんでしょう。でも、誰が、いつ、どんな仕方で発見したんですか?いつ、誰が、どうして、そういうことが起るということに気がついて、その原理を解明したのか。原子炉でそれ実現しているということは正しいのですよ。
誰が直感的に、何をきっかけに気がついたのか知りたいですよね。それじゃないと、本や雑誌に書いてあるのを鵜呑みにする訳にいかないでしょう。分からないもの。

日常の我々の世界では、何千度、何万度というような、そんな高い温度は出てこないでしょう。物を燃やしてもせいぜい1000℃ぐらい。それは、物質に酸素が結合するという化学反応のことなんです。だけど、核分裂というのはそれとは全然別のことで、原子を壊している。そのときにとんでもないエネルギーが発生しているんだけど、これは化学反応ではなく物理的現象(核反応)なんです。

同じエネルギーと言っても、でき方も成り立ちも違う。
かつて、人類、生物が、地球上でエネルギーを取り出して来たのとは違うものだから、上手くコントロールしたり、つき合ったりしていく必要があります。まだ使い始めてたかだか60年とかそのくらいしかたっていないんです。
だからよく分かっていないことがまだたくさんあって、みなさん、自分の頭で調べたり考えたりしてみる必要があるのです。
原子力や核分裂というものに気がついたり、発見した人がいたんです。具体的な人を追ってみることが必要でしょう。

ベクレルやシーベルトっていう放射能の単位だって、それを見つけて名前をつけた人がいるんです。ベクレルさんも、シーベルさんも、グレイさんも、レントゲンさんもみんないますよ。そうすると、ベクレルさんも親しみを感じるじゃないですか。キュリー夫人も有名でしょう。
キュリー夫人は、ラジウムを手づかみ実験やっていたんですよ。今そんなことはとんでもない話でしょ。でもそういうことも何も分かっていない時代だったんです。

どこかの時点で誰かが気づいたり発見したりしている歴史があるんです。そういうものを調べてみて下さい。私も調べるけど、みなさんも自分で調べてみること。
そうすると原子力ということに関して自分なりのイメージができるでしょう。それ自体は具体的な1人ひとりの人間がいて、気づきや発見が積み重ねられて作られたものなんです。インターネットで調べたらいくらでも出てきますよね。私もインターネットでおおよその見当をつけるということをします。でも、めちゃくちゃなウソを言っている人もいるから、吟味が必要ですよ。インターネットで見ることができる映像のサイトがあるから、それを見てもいいですね。
誰かが教えてくれるだろうって口あけて待ってても本当のことはよく分からない。まず、自分で調べて、自分の頭で考えることがとても大事です。


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