サマースクール2007(その2)

サマースクール3日目の8月7日、東京工業大学理工学研究科地球惑星科学専攻教授、丸山茂徳先生を迎えて セッションが開催されました。
かずさアカデミアホールの会議室で保護者の方々もお迎えして午前中から始まりました。
丸山教授はこれまで3回、ヨハネ研究の森で地球に関係する講義を行って頂きました。そして、今年は 丸山先生の考え方による地球温暖化をテーマとして講義となりました。
午前中の講義を要点をご紹介します。

・テーマ 「21世紀の地球環境と日本の国家戦略」
・講義要点
 2020年問題と地球環境について日本も世界も永遠に豊かで繁栄が続くと考えられていた。 これが2020年には崩れてしまう。
2020年問題についてヨーロッパ諸国、アジア、ニュージーランドと取り組み始めている。 日本は政府として全く取り組みがなされていない。この2020年問題とは何か。 現在、世界の人口が60億人を超えた。2050年には100億人になると予想されている。 人口が増えたことにより、食料、資源、生産量のピークが2020年になると予測されている。 「成長の限界」がやってくる。人口が指数関数的に増えることで、化石燃料も指数関数的に消費される。 食料生産もおいつかない。このことで燃料と食料の奪い合い(戦争)が発生し21世紀は 人類史上最悪の悲惨な世紀となる可能性がある。このように人口が増加することは歴史上なかったので 歴史から対策を学ぶことができない。世界人口が適正になるように今から対応していかなければならない。 日本の適正人口も4000万人くらい。そして、化学汚染が広がりすぎているので環境の回復も なされなければならない。
 地球温暖化問題について、温暖化は事実起きているが人類の生産活動とは無関係に地球の気温変動は 起きる。1万2千年前に地球の平均気温が上がって今のような安定した気候になった。しかしそれまでは ロンドン、ニューヨークも氷の世界だった。4世紀、アーリア人やモンゴル人は小氷河期に あたって南に民族移動した。地球自然のサイクルによるとこれから寒冷化が始まる。 人類の生産活動(CO2)とは無関係に温暖化、寒冷化は起きる。温暖化により赤道付近は 海に沈むこともあるがツンドラ地帯は牧草地に変わる。ということは温暖化は歓迎すべきこと。 逆に寒冷化は化石燃料を膨大に消費してしまう。自然環境の固定化(温暖化防止)は不可能なこと。 2020年には「成長の限界」がやってくる。持続可能な社会を実現しなければならない。人口増加による 人口圧力が20世紀の戦争の原因なので人口抑制をしなければならない。人間中心主義の誤りを 正し、動物、植物、微生物まで含めた地球システムを理解し持続可能な社会を創らなければならない。
 持続可能社会を実現するためには世界統一国家を作るしかない。これは可能か。
 現代はトインビーの時代とは違い、ボーダーレス社会となっている。人も物も情報も金も世界中を 動き回っている。インターネットによる統治国家が可能かもしれない。国家モデルはアメリカ。 アメリカは様々な人種、宗教が集まり、州としてゆるく連合している。これを世界に当てはめてはどうか。 国境は残るがインターネットによる民主主義を基本原理とする。ヨーロッパもEUとして実現できた。 現代は知的混迷の時代となっていて情報量は多いが何が本質なのか見えにくい。原因の原因がどこに あるかわからなくなっている。太平洋戦争も人口が増えすぎて食料が足りずに領土拡大として中国、台湾に 移動した。これが戦争の原因だと考えられる。
 統一国家への障壁は戦争論と社会体制の歴史の共通理解がなされていないこと。 社会から戦争をなくすためには民主主義国家を増やすことが必要かつ近道。民主主義国家同士は 戦争をしない。また、国際社会には警察の仕組みが必要。生物は多様性をもっている。これは人間とて同じこと。 いい人もいれば、悪い人もいる。悪い国も出てくるために警察機構が必要。アメリカの役割を理解することが 必要。総合的文明論が必要。それがわかれば軸がぶれない個別的政策が決まる。
 
続いて午後の講義の要点をご紹介します。
・テーマ 「地球温暖化は本当か?」
・講義要点
地球が温暖化していることは事実。但し原因は太陽。温暖化とCO2問題は別問題。
地球表層の温度はどのようにして決まるか。本来なら太陽放射と地球の放射で釣り合っているはずなのになぜ 温暖化するのか。
 温暖化ガスの量は1.水蒸気 2.CO2 3.メタンガス このうち水蒸気が温暖化の原因となっている。 二酸化炭素は量的に少なすぎるので温暖化に対して影響力はない。
 水蒸気は雲となる。この雲の生成が太陽と関係している。 雲が1パーセント増えると温度は1℃下がる。CO2が今までの二倍になったところで0.5℃しかあがらない。 スベンスマルク説では宇宙線が雲の生成の原因。太陽活動が活発になると地球に入る宇宙線は太陽風で飛ばされて 少なくなる。そこで雲が少なくなる。すると温暖化する。太陽黒点が増えると太陽風が強くなるので地球に届く宇宙線は減る。 今まで太陽活動は活発だった。そのため雲が少なくなり温暖化した。CO2が原因だとすると、産業革命以降に 発生した1940年から80年までの小寒冷化が説明できない。
 CO2犯人説の場合、太陽活動を一定として計算している。温暖化ガス(CO2,CH4,CFC,O3,N2O) の効果を大きく計算している。雲の影響を無視している。データが作られている。 地表の温度は何が決めるのか、原理は何か。それは放射エネルギーvs放出エネルギー。太陽エネルギーの増減。 温暖化ガスの温度変化。雲の増減(宇宙線、磁場強度、エアロゾル)これらを定量的に評価すると CO2よりも水蒸気の方が温度変化に対する影響が大きい。
 また、地球の緩衝機構を知ることも必要。地表のCO2が増加するとそれを減少させるシステムが働く。 CO2が増えると海に溶け込む。植物が吸収する。ハワイでの平均気温とCO2濃度を見た場合、 気温が上がるとCO2が増えている。 地球システムの理解が必要。CO2が増えると植物が増え、動物が増える。太陽活動が弱まると雲が増え、 地球は冷える。そして平衡を保つ仕組みがある。 人口が増え、人間圏が広がるといろいろな影響が地球システムにでる。 地球の未来の環境変動を予測する方法
1 表層気候変動の主要な変数(太陽、雲、磁場、温暖化ガス、エアロゾル)の理解
2 長い時間周期を持つ変動を地質学的記録から確認(ミランコビッチ周期)
3 変動の階層性の理解
太陽活動は現在がピークで今後弱まる可能性が高い。地球の磁場が弱まっている。磁場が弱くなると 宇宙線量が増えて雲が発生する。
近未来予測として、太陽活動は弱まる、磁場は弱まる、火山噴火によるエアロゾルは増える(雲が出る)
温室効果ガスは増えたとしても多元要因を考えた場合、今後地球は寒くなると予測できる。
気候変化は多元要因なので、現在言われているCO2も桁違いに量が多ければ影響があるだろうけど、 それ以上にその他の要因の影響の方が大きい。
本来なら10万年周期を持つ過去の気候変動の精密判断によって未来予測を行うべき。

丸山先生の講義が終わると質問の時間となりました。この温暖化の真偽、寒冷化の時期、地球の仕組み、 等様々な活発に質問が続きましたが、会場の制限時間となったので講義は終了しました。

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