
滙佳学校との国際交流が開催されました
4月28日、ヨハネ研究の森に、中国北京市の滙佳学校から、修学旅行の一環で、16名の中学生が国際交流に来てくれました。
ヨハネではオリエンテーション期間を通し、「自分のことば」について日々検討を重ねてきました。英語でも日本語でも、他者に分かりやすく物事を伝え、他者の意図を理解するためには、それを自分なりに解釈し描き直す「自分のことば」が欠かせません。現在ヨハネで検討している井上ひさし作の『國語元年』は、明治初期、郷土の違う人々がことばが通じなかった時代の日本を描いた作品ですが、今回の国際交流では、言語の異なる人達にいかにして何かを「伝える」か、自分たちの身体をもって実践する絶好のチャンスとなりました。
急ピッチでの準備とはなりましたが、ヨハネ生一同、海の向こうから来てくれる中国の人たちに喜んでもらいたい一心で、日本の文化を共に分かち合えるような企画を考え、共に心を込め、力を合わせておもてなしの体制をつくっていきました。
そして迎えた当日。会場となったのは特別な催事のために故・田川茂先生が作ってくださった学園のクラブハウスです。白いクロスに覆われた円卓やステンドグラスのような採光窓など、格調高い設えに、ヨハネ生たちは高揚と緊張を隠せない様子でした。
ヨハネ生の中には中国にルーツがある研究員もおりますが、多くは中国語を話すことはできません。そのため会場の共通語は英語となりました。ヨハネ生には英語が得意な研究員もいれば、それほど得意でない研究員もいますが、「どんな風に話したら伝わるだろう」と一生懸命考えながら、自己紹介をし合いました。
万里の長城の近くに位置するという滙佳学校は、私達の暁星国際学園と同様、インターナショナルスクールです。多くの生徒がイングリッシュネームを持っていました。交流に来てくれたのは中学2年生でしたが、中には非常に流暢な英語を話す生徒さんもいました。ヨハネ研究の森での国際交流は彼らの旅程の第二日目であったようで、疲労があり少し眠そうな生徒さんもいました。
少し場が温まったところで、まずはヨハネ生恒例の歌でのご挨拶として、日本で愛される合唱曲「Believe」を歌いました。あなたは一人ではないよ、一緒に希望を信じようね、と語りかける歌です。一緒に揺れながら、微笑みながら聴いてくれました。
お互いの学園紹介の後は、ヨハネ生から代わる代わる、中国語、母国語である日本語、英語と、多国語でのご挨拶を行いました。フランス語でご挨拶した時、滙佳学校の生徒さんたちの中にもフランスにルーツを持つ方がいるということで、中国語だけでなく、フランス語と英語でも流暢な挨拶をしてくださいました。
アクティビティの一つ目として、ヨハネで取り組んでいる武道である合気道をご紹介しました。道着姿で現れた精鋭のヨハネ生が、中国の生徒さんたちに演舞を披露します。眼の前で繰り広げられる投げ技に目が釘付けになっていました。その後は、「力を受け流す」ことで相手を崩すという合気道の真髄を実感していただくため、体験コーナーを開きました。技を掛けられたい中国の方を募り、ヨハネ生の両手を力いっぱい掴んでいただいたり、思い切り肩を組んでいただいたりしてから、受けた力を流すことでヨハネ生が「縄抜け」する、というのを実演しました。合気道有段者のヨハネ生がその場で実演し、中国の子たちは「動けなかった」と驚いていました。
その次は折り紙です。5月の端午の節句にちなみ、一緒に兜を折りました。ヨハネ生は大きな折り紙の見本を見せて、前で実演しました。中国の皆さんはとても真剣に説明を聞き、とても初めてとは思えないほど器用に、綺麗な折り目を付けて、色とりどりの兜を作ってくれました。


その後は、自分でつくった兜をコマにして、ヨハネ生の製作したすごろくで一緒に遊びました。研究プロジェクト「文明と天災」製作による、災害伝承すごろく(3Dすごろく)です。
「すごろく」というゲーム自体を遊んだことのなかった中国の方たちは、初めとても不安そうにしていました。言語の壁もあり、元々のやり方ではどうしても伝わりませんでしたが、遊んでいくうちにだんだんルールも伝わっていき、皆で楽しめるようになりました。
このすごろくには、災害伝承を楽しんで学んでいくために、様々なアクティビティがあります。ストップマスでの全員スクワットや、「地震が起きて飛び出す猫を追いかけて」、テーブルの周りをぐるぐる走っているうちに、あちこちから楽しそうな声が聞こえてきました。英語自体は拙くても、気持ちが伝わっていき、初めは緊張していた中国の子たちも次第に打ち解け、笑顔になっていきました。
皆さんとても親切で、ヨハネ生が英語で意味をうまく伝えられない時は、英語の得意な中国の方が率先して中国語に翻訳して他の仲間に伝えてくれ、一緒に盛り上げてくれるような一幕もありました。何でも楽しもうとしてくれる優しい人間性に触れ、胸を打たれました。
このようにして、ヨハネ生ひとりひとりが自分の壁を乗り越えながら、「伝えたい」「関わりたい」と思う気持ちで場に臨むなかで、「すごろく」を通して共に楽しみ、場が一体になっていきました。

すごろくの後は、サプライズで、中国の方たちから、私達のために中国で選んできてくれたプレゼントを渡してくれました。万里の長城の伝統的な湯呑みや、中国の獅子舞のようなモチーフの可愛らしいストラップなど、日本で出会う私達のことを考えて選んでくれたのであろう、心のこもったプレゼントに、胸がいっぱいでした。私達からも、日本ならではの折り紙の浴衣と、ここ千葉県のイメージキャラクターであるチーバくんのストラップをプレゼントとして渡しました。Cute!と喜んでくれたので、「チーバくんというんだよ」と伝えると、「チーバくん」と名前を覚えてくれました。「チーバくんは千葉県の形をしているのだ」ということを伝えるために悪戦苦闘している最中に、比較図がスクリーンに映し出され、一緒に笑い合いました。

最後にもう一度歌を歌おう、という流れになった時、自然と一緒に並んでくれ、共に集まって歌うことができました。曲は韓国の牧師さんが作られた讃美歌である「君は愛されるために生まれた」です。中には、一緒に口ずさんでくれるこもいました。にわかに感動に包まれ、互いに握手をし、感謝を伝え合いました。「謝謝」と「Thank you」が飛び交いました。
校内案内と昼食のあと、皆さんがバスに乗って帰っていく前に、ヨハネ生一同お見送りに向かい、心を込めて折ったお土産の鶴や鯉のぼりを渡して別れを惜しみました。「今日は本当にありがとう」の思いを込めて鯉を渡すと、手を広げてハグをしてくれました。いつまでもいつまでも手を振り合っていました。
バスが見えなくなった後、ヨハネ生皆で、「また日本に来てほしいね」「また会いたいね」「中国に行きたいね」と語り合いました。
このようにして、国際交流会は大成功のうちに幕を閉じました。新入生も先輩も一緒になり、ヨハネ生皆で場を創りあげることができたように思います。
また英語という「共通語」でのことばを媒介に、一生懸命、身振り手振りで、表情で、全てを使って相手に伝えようとすることで、気持ちが通じたこと。そしてすごろくを「干潟」として、通じ合うことができたこと。かけがえのない瞬間を過ごすことができたように思います。
