2025学園祭(3/4)
学園祭では、ヨハネ研究の森コースでも楽しい発表の機会を持つことができました。今回は、2回にわたって、ヨハネ生のレポートよりお伝えしたいと思います。
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今年度を通して研究してきた「ことばの獲得」において、「パラフレーズ」は欠かせないと、Sessionにて繰り返し繰り返し気付かせていただきました。自分の見聞きした物事を、伝えたい相手に向けて、もう一度「ことばで再構成する」という、ことば使用の真髄こそ、パラフレーズなのです。
今回私たちが取り組んだテーマは、「スタジオジブリ作品」です。「ことば」のプロフェッショナルとして、サマースクールにて「自分のことばとは何か」についてご講演いただき、その後日、さらにヨハネ生に向けた言葉の贈り物をくださった朝日新聞記者の太田啓之先生への感謝と敬意を込めて、先生がスタジオジブリの名監督である高畑勲さんとの対談を題材とされていたことにちなみ、このテーマに向かっていくことになりました。
私たちは、太田先生の言葉を通して高畑勲監督の新しい視点を得ました。同じジブリ作品でも、宮崎駿監督は主人公に自らを投影し深く作品に没入する「思い入れ」型の作品を作る一方、高畑勲監督は、感情ではなく理性を働かせ、それぞれの登場人物の立場を思いやる「思いやり」型の作品を目指していらっしゃると監督はおっしゃいます。
ヨハネ生は大きく3つのグループに分かれ、それぞれ高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』・『千と千尋の神隠し』のパラフレーズを行いました。
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【平成狸合戦ぽんぽこ』のパラフレーズを通して】
自分たちのグループでは『平成狸合戦ぽんぽこ』をパラフレーズしました。この物語は、古来、多摩丘陵の里山に暮らしてきた狸が、高度経済成長期に入り、多摩ニュータウン開発によって住処を追われることになり、開発を止めさせるべく知恵を凝らして奮闘するというお話です。初めて観た作品で、狸たちがすぐに調子に乗って、わいわいと飲めや騒げやの宴会をしてしまうユーモラスな姿に笑ってしまいながらも、同じふるさとで共生してきた狸と人間の悲しい運命に心揺さぶられたりしました。ただ、自分の視点だけでは、実際のところ、どのような物語だったのかを捉えきれず、筋が曖昧なままでした。
しかし、パラフレーズを通し、先輩たちを中心に皆で話し合いながら、一つ一つの場面について、端的にことばにしていく中で、断片的だったシーンが結ばれ、物語の全体像がやっと見えてきました。大きな流れをことばにしていくことを通して、それぞれのシーンの意味がはっきりしてきたのです。また高畑監督が、狸も人間も狐も、正義や悪に二分することなく、ありのままを描いているということが見えてきました。言い過ぎかもしれませんが、自分にとっては、映像を見るよりも、自分たちのパラフレーズを読むほうが分かりやすくて面白いぞ、と思えるぐらいでした。
今回のパラフレーズは、学園祭を見に来てくださる方々や、別の作品をパラフレーズする他のグループの方々に「伝える」ことができて初めて完成するものだと、先輩は繰り返し言っていました。自分は、皆で書いた文章を繰り返し繰り返し「声に出して読む」過程で、「自分のことば」になっていくような感覚がありました。発表本番では緊張しましたが、早口になってしまった時には先輩につついてもらって、しっかりゆっくり、大きな声で発表することができました。
自分は、この発表を通して、パラフレーズをする意味が、本当の意味で分かってきた気がしています。